産廃判例|無計画に廃タイヤを購入し続けて懲役罰金となったケース

廃棄物についてまとめているのは廃棄物処理法という法律ですが、この法律に違反したり、または紛争が起きて裁判まで発展することはとても多いです。

過去の裁判で、裁判所が示した判断のことを判例といいます。判例はその後に起こる同じような事件で裁判するときの先例となります。ですから、判例を知ることでどういうことはしてはいけないのか、また、どう判断されるのかを知ることができます。

ここでは廃タイヤに関する事件について紹介していきます。

目次

事件の経緯

長崎市にある非鉄金属スクラップの売買をしている有限会社Aの取締役として業務全般をまとめていた被告人は、平成19年8月に長崎市長から、長崎市の土地に放置している廃タイヤ、廃油等の産業廃棄物を平成20年1月までに撤去し、適正に処理することを命じられましたが、撤去を行わず、この命令に従いませんでした。

判決

主文

懲役1年2ヶ月、罰金100万円nn罰金を払うことができないときは、1万円を1日に換算した期間、労役場ではたらくこと。

主な内容

被告人は廃タイヤを販売したり、油の原料にしたりするなどの目的でお金をもらって引き取ったタイヤを会社の敷地内に野積みしていました。そして無計画に大量のタイヤを運び入れ続けて放置しました。

途中火災を引き起こして起訴されて裁判になり、今後責任をもってタイヤを撤去することを誓いましたが、処理費用がなく、再三の行政の指導にも従わず、やはり放置し続けてしまいました。

廃タイヤ約9万7000本、廃油約3500リットルと非常に多量な廃棄物を放置し、しかもタイヤに溜まった水から蚊が発生するなどして、周辺の生活環境に悪影響を及ぼしていました。

被告人が行政の措置命令に違反したのは片付けるお金がなかったからですが、本来ならタイヤを引き取った際にもらっていた料金を計画的にこの処理のために利用するべきだったはずです。そういった観点から、裁判所からは身勝手で、深く考えていない行動だったと判断されました。

解説

廃棄物処理法の罰則規定では、みだりに廃棄物を投棄すること、焼却することなどが処罰の対象になります。また、一般廃棄物又は産業廃棄物を収集運搬したもの、また処理を他人に委託したものも処罰しています。

この事件では、法で決められた処理基準に適合しない産業廃棄物の処分(タイヤを放置したこと)が行われた場合に、生活環境を保つ上で支障(蚊の大量発生など)が生じたりまたは生じるおそれがある時には、都道府県知事は「その支障を除去するためにどうにかしなさい」と命令することができ、この命令に違反したことが犯罪行為だとしています。

この違反に対する刑罰は5年以下の懲役または罰金で、その併科(両方を科すこと)も許されています。今回の事件では、裁判所は判決で被告人に併科しています。

さらに今回、A有限会社は事実上廃業していたようで起訴はされていませんが、命令違反したのは法人であるAという会社です。会社と同時に自然人である被告人も処罰するために両罰規定の条文を適用しています。

両罰規定とは
法人(会社)などの代表者や従業員が業務に関して違反行為をしたときに、直接の違反者を罰すると同時に、その法人も罰することを認めている規定のことです。会社とそこで働く人とは本来別々に考えられるべきですが、会社の業務に関係することの場合は両方を罰しますよ、という決まりの事です。

まとめ

この判決では長崎市長の措置命令を無視したことによって処罰されています。

これまでは措置命令違反による処罰の例は少なかったようですが、この判決が先例となっており、今後増えていくかもしれません。計画的な適正処理を心がけていきましょう。

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