農地を他人に譲り渡すとき、通常、農地法3条の許可を得なくてはならないのはご存知のことと思います。
⇒こんなときは許可が必要です。所有権を移転するとき
農地を売買したいということになり、許可の要件が整っていたら都道府県知事に対して申請をします。通常申請してから30日ほどで許可は下りるのですが、その期間中に売り主、または買い主が亡くなってしまうということも有り得る話です。
そんなときはもちろん、農地どころではなく、お葬式や相続などで大変だと思いますが、一段落ついて忘れたころにこの許可が降りてきた場合、どうなるでしょうか。売り主と買い主の両方のケースについて見ていきたいと思います。
許可が相続人に引き継がれるかがポイント
売り主が亡くなってしまったケース
結論から言うと、農地法所定の許可の申請後、売り主が死亡したときには、申請済みの許可手続きの効力は売り主の相続人に引き継がれます。
つまり、許可の申請をした後、許可される前に売り主が死亡しても許可手続きは進行して、許可は有効な許可となります。
ただし、許可による買い主への所有権移転前に売り主に相続が生じているので売り主の相続登記を先にする必要があります。その後、死亡した売り主名義のままの許可書を添付して、有効に買い主に対して所有権移転登記をすることができます。
売り主(死亡)→相続人→買い主というように、一度相続人を経由しての売買になります。相続人への相続登記を省略することはできません。
売り主は亡くなってしまいましたが、農地は今後、買い主によって農業を続けてもらえるので有効となる、というようなイメージでいいと思います。
買い主が亡くなってしまったケース
今度は反対に買い主が亡くなった場合です。
このケースでは売り主が亡くなったケースとは異なり、申請済みの許可手続きの効力は買い主の相続人には引き継がれません。
発せられた許可は無効となってしまいます。したがって、その許可書を添付しても、亡くなった買い主名義にも、買い主の相続人名義にも所有権移転登記をすることができません。
もし買い主の相続人がこの農地を必要であれば、あらためて売り主と許可を受け直す必要があります。
つまり、売り主→買い主→買い主死亡(相続発生)→相続人の順に所有権が移転していたのなら、これは相続ですから引き継げるのですが、
今回のケースですと売り主→買い主の相続人と直接の移転となっているので、これは認められないということです。
亡くなった買い主は農業を続ける意志がある人でしたが、その相続人は農業を続けるかどうかは分かりませんよね。なるべく農業を続けてもらうための許可制度ですから、許可はできないというイメージです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。なんで売り主と買い主とで違うんだろう、と思われるかもしれませんが、許可制度というのは必要最低限の許可しか出さないという考え方によって、法律上の解釈でこのように判断されています。どうぞ参考にしてください。