農地転用をしたい場合に、やはり気になるのがその農地が本当に転用できるのかどうか、というところだと思います。これは「農地転用許可基準」という基準により判断される事になります。
農地転用許可基準には「立地基準」と「一般基準」があり、立地基準は営農条件や市街地化の状況から見てさらに5種類に区分されています。
⇒くわしく説明します。農地転用許可基準について
この記事ではその5種類の中から第1種農地についてくわしく解説していきます。
政府は農地転用の規制を緩和することを決めました。今後、
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政府は農地転用の規制緩和に向けた農地法などの改正を閣議決定しました。
上記は先月の日本経済新聞の6月20日付の情報だったのですが、どうやら早まった解釈だったようです。
「農地転用が原則可能になったり、農用地区域や第1種農地における転用が原則許可になったりするものではない」と農林水産省が指摘しているようです。
正しくは(今ある情報では)
これまで「農用地区域内農地」や「第1種農地」の農地転用は、基本的には工業・倉庫業・卸売業など5業種に限定していたところを
サービス業・観光商業施設・IT関連企業などの「産業」に見直し、業種を拡大しました。
第1種農地とは
農地法ではこのように定義されています。難解な部分がここから少し続きますので1つずつ解説していきます。
農用地区域内にある農地以外の農地で、集団的に存在する農地その他の良好な営農条件を備えている農地として政令で定めるもの
「集団的に存在する農地その他良好な営農条件を備えている農地」
とは、ひとことで言うと生産性の高い良い農地のことです。
このような良好な農地は確保していくことが必要であるという考え方のもと、原則として農地転用を許可しない農地として位置づけられています。
具体的には周辺法令によって規定されている次の3つの農地に細分化して置き換えられています。これが第1種農地の全体像です。
細分化していってしまうのですがきちんと解説していきますのでもう少しだけついてきてください。
次の3つの農地です。
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- おおむね10ヘクタール以上の規模の一団の農地の区域内の農地
- 土地改良事業等の農業に対する公共投資の対象となった農地
- 傾斜、土性その他の自然条件から見てその近傍の標準的な農地を超える生産を上げることができると認められる農地
1, おおむね10ヘクタール以上の規模の一団の農地の区域内にある農地
「おおむね」の範囲
おおむね10ヘクタールの規模の「おおむね」は、やや幅をもたせた表現です。これは近隣地域の都市化の速度や発展の方向性、周辺の土地の利用状況など、地域によって水準が違うためです。
そういった理由から個々に判断するべきですが、一般的には1割程度の範囲が適当と考えられます。
一団の農地
一団の農地とは山林、宅地、河川、高速道路など、農業機械が横断できないような土地に囲まれた集団的に存在する農地のことです。
なお、農道、農業用用排水施設、防風林などによって分断されている場合でも実際に農業機械によって容易に横断、迂回できて一体として利用することに支障がなければ一団の農地と判断されます。
高性能な大型トラクターなどの農業機械の導入によって生産コストは低減し、農業経営面積の拡大で生産性の高い効率的な農業経営を行うことができます。ですのでこのような広く、塊となっている集団的な農地を確保して、コスト低減、規模拡大をしていくことが必要とされているのです。
2, 土地改良事業等の農業に対する公共投資の対象となった農地
補助金や農業関係の融資を受けて土地改良事業などが実施された農地は、用排水路、整地、土壌改良の整備がされて生産性が高くなっている農地です。
また、公共のお金を使ったこととその経済効果を見込んでいる面からも、農業利用を優先的に考えるべき土地です。
具体的には次のような事業が施工された区域内にある農地です。(事業の調査計画段階であるものは含みません)
農地その物がもつ生産力を直接的に向上させる事業が施工された土地
(災害を防止することを目的とするものを除く)
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- 農業用用排水施設の新設または変更
- 区画整理
- 農地または採草放牧地の造成
- 埋立てまたは干拓
- 客土、暗きょ排水など
公的な性格のお金が使われている
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- 国、地方公共団体が行う事業
- 国(地方公共団体)が直接(間接)に経費(全部または一部)に補助や助成を行う事業
- 公庫からの貸付を受けて行う事業
3, 傾斜、土性その他の自然条件からみてその近傍の標準的な農地を超える生産を上げることができると認められる農地
農地は土壌、水温など、その土地の属性によって、同じ質・量の労働力を投入しても単位面積あたりの生産量に差が出るものです。
他の農地に比べて生産能力の高い農地はより効率的な農業を行える農地として、確保していく必要があるのです。
例えば果樹園で傾斜などの自然的条件がバッチリはまって良好であるために周辺の果樹園よりも生産力が高い場合などが考えられます。
1の集団的農地や、2の公共投資の対象でもないのに標準的な農地を超えるような生産を上げることができると認められる農地はやはり大事にしていきましょう、という趣旨です。
まとめ
いかがだったでしょうか。
農地は農地法や関連法令によって守られています。しかし、なんでもかんでも基準を厳しくしてどんな農地も絶対守るんだ!と言うことではありません。今回の第1種農地のように、守るべき理由があって守る(=農地転用を許可しない)ことがご理解いただけたと思います。
それはつまり裏を返せば、それほど守る理由がない農地は柔軟に転用許可を出すための基準とも言えます。是非参考にしてください。
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