あなたはもしかすると、農地転用をしたい農地があって、「都市計画区域」や、「市街化区域」や「市街化調整区域」を調べていて、頻繁に出てくる「線引き」という言葉に疑問を持ったのかもしれません。
当たり前に使われている言葉ですが、実は法律用語ではなく、一般的に呼ばれている言葉で、これが定着したものです。
ここでは線引きについて詳しく見ていきます。
線引きとは
法律上の用語では「区域区分」と表されています。
区域区分とは、都市計画に「市街化区域」と「市街化調整区域」との区分を定めることを言います。これが事務手続きにおいて一般的に線引と呼ばれています。
現在行われている都市計画の制度は、昭和43年に制定された都市計画法に基づいています。
この法律が制定された当時、高度経済成長期以降都市部へ人口が集中したため、過密などにより居住環境が悪化したり、道路や公園などの公共施設の整備が伴わないまま都市が無秩序に拡大することを防ぐため、線引き制度が導入されました。
その後、人口増加のほとんど見られない地方の中小都市にまでは、画一的に線引きする意味・効果がなくなってきたため、平成12年の改正で、線引き制度の義務付けを廃止し、線引きそのものが選択制になりました。
線引きで分けるそれぞれの区域
国土交通省「みんなで進めるまちづくりの話より」
市街化区域
n優先的かつ計画的に市街化をすすめる区域のこと。国土の3.9%を占めています。
具体的には「すでに市街地を形成している区域」と「近い将来優先的に市街化をはかるべき区域」です。
この区域に市街地を一定規模の範囲に集中させることによって計画的効率的に公共投資を行える等の効果が期待されます。
更に用途地域を定めて、土地利用の内容を規制することにより、建築可能な建物を制限することができます。
また、補助的地域地区を定めて地域の特色に合わせた制限をかけることで、良好な都市環境の市街地形成が期待されます。
市街化調整区域
市街化区域とは反対に、市街化を抑制し、調整する区域のこと。国土の10.3%を占めています。
この区域での開発行為は原則として抑制され、都市施設の整備も原則として行われません。規模の大小にかかわらず、開発行為を強力に抑制することが出来ることから大変厳しい制度だといえます。
非線引き区域
市街化区域でも市街化調整区域でもない都市計画区域のこと。長いのであまり聞きませんが、法律上は「区域区分が定められていない都市計画区域」といいます。
非線引き区域は平成12年までは未線引き区域と言われていました。
線引きの意義、問題点は
線引きの意義は3点です。
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- 無秩序な市街地の拡大による環境悪化の防止
- 計画的な公共施設整備による良好な市街地の形成
- 都市近郊の優良な農地との健全な調和
地域の実情に沿った都市計画を立てていく上で非常に重要な意味を持っています。nn n
問題点
しかし、東京、名古屋、大阪の三大都市圏とは異なり、人口の流出が進んだ地方都市では線引き制度の導入後、様々な問題が発生しました。
想定したほど都市部への人口集中が起こらず、規制のゆるい非線引き区域に居住する人が増えて、非線引き区域での無秩序な開発や景観の悪化が懸念され、当初にめざしていた線引き制度の目的にそぐわないものとなってしまいました。
線引き廃止の効果と影響
上で説明したとおり、線引制度は選択制になりました。線引き制度を廃止した都市もあります。
廃止の主な理由としては
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- 土地利用に関する規制の度合いが大きく異ることに対する不公平感
- 市街化調整区域内の地域の活力低下への危機感
- すでに人口減少の真っ只中で、新規の開発が認められにくい不満
が挙げられています。線引き制度のメリットよりもデメリットが上回った声といえるでしょう。
効果と影響
線引き廃止か継続かの選択は都市計画制度の中でも最も大きな影響をあたえるものです。
これまでに廃止した都市の事例からその効果と影響が以下のようにまとめられています。
②市街化区域内の農地を転用しようとする場合は農業委員会への届け出で足りていたところだが、線引き廃止後は第三種農地となることから、転用の際は県知事の許可が必要となる。第三種農地は原則として転用が許可される方針であるため、影響は少ないものといえる。
固定資産税については一般農地として課税されることとなり、税負担が大幅に軽減されることとなる。また、宅地促進策がなくなることにより、耕作放棄地が増加してしまうケースが見受けられる。
③非線引き都市計画区域は市街化圧力が弱く、一定地域の市街化を特に促進するとの位置づけを持たない区域であることから農用地区域における農振除外は理由付けが困難となり、実質的に農振除外を行えなくなる可能性が高くなる。
⇒第3種農地は原則転用許可です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
区域に分けることはヨーロッパの都市の旧市街をイメージするとわかり易いと言われます。旧都市では集落を城壁で取り囲み、その内側で商業や工業などの都市活動が営まれできました。
このため城壁の内側では道路が行き渡り、教会や市庁舎を中心に広場などが設けられ、5階建ての建築物が並ぶなど、空間の高度利用が図られています。これが市街化区域のイメージです。
一方、城壁の外側では畑や森林などの豊かな自然環境が広がります。これが市街化調整区域に置き換えられると思います。
是非参考にしてください。