もしあなたが宅地などに転用したいと思っている農地が、「農用地区域」にはいっていたら・・・これはちょっと大変です。
なぜなら農用地区域というのは「農業振興地域の整備に関する法律」(農振法)により長期に渡り農用地等として利用すべき土地として、農業の振興に必要な施策を計画的、集中的に行う区域に定められた土地だからです。
つまり、そんな計画をたてられている農地を他の土地に転用することはほぼ全く認められず、転用するためにはまず、その農地を農用地区域から外すところからはじめなければならないのです。
ここでは、いわゆる農振除外(農業振興地域指定から除外する手続き)をみていきます。
政府は農地転用の規制を緩和することを決めました。今後、
政府は農地転用の規制緩和に向けた農地法などの改正を閣議決定しました。
上記は先月の日本経済新聞の6月20日付の情報だったのですが、どうやら早まった解釈だったようです。
「農地転用が原則可能になったり、農用地区域や第1種農地における転用が原則許可になったりするものではない」と農林水産省が指摘しているようです。
正しくは(今ある情報では)nこれまで「農用地区域内農地」や「第1種農地」の農地転用は、基本的には工業・倉庫業・卸売業など5業種に限定していたところを
サービス業・観光商業施設・IT関連企業などの「産業」に見直し、業種を拡大しました。
農振除外の流れ
大まかには
青地→白地→農地転用→宅地等の流れです。
こう書くと簡単なようですが、おそらく農地関係の手続きの中では一般的にも最も難しい手続きだと思われます。
「行政が時間をかけて計画し、決定したものをひっくり返す」という大変な作業ですのでかなりの時間と手間がかかります。
静岡県富士市では原則として年に2回だけ(6月と11月)に農政課農業振興担当の窓口で受け付けています。

農地区分についてはこちらで詳しく解説しています。n⇒くわしく説明します。農地転用許可基準について
農業振興地域整備計画とは
県が定めた基本方針に基づき、農業振興地域内において農業振興に関する施策を計画的に推進するために、市町はおおむね10年を見通した計画をたてています。
これが農業振地域整備計画です。
この計画の中で、農用地の保全の方向や具体的な事業・活動について定められるほかに、農用地区域とその用途が定められています。
農用地区域(通称青地)とは
市が定めた整備計画で、今後10年以上にわたって農業上の利用を確保すべき土地を定めています。これが農用地区域です。
農用地区域は農業的な利用を行うことを定めた区域ですので、原則として農業上の用途以外の利用ができません。
農業以外の利用をしたい時には農用地利用計画の変更(いわゆる除外)という手続きが必要になります。そのためには農振法の定める除外の要件を満たすことが必要です。
除外の要件とは
農用地区域の農地を除外する(白地にする)ための要件は法令で定められています。
以下の要件をすべて満たさなければいけません。
-
- 除外したい農用地以外に代替すべき土地(宅地、白地)がないこと
- 集団性のある農用地を分断しない、あるいは農作業を行う上での支障が軽微であること
- 農用地の利用集積に支障を及ぼす恐れがないこと
- 用排水路などの土地改良施設の利用に支障を及ぼすおそれがないこと
- 土地基盤整備事業完了後8年を経過していること
また、除外することがほんとうに必要なのか明確な理由が必要です。
「自分の土地だから」とか、「土地が安いから」などの理由では説得力がありません。「現状が荒廃地となっているから耕作できない」という理由でも除外はできません。
具体的な計画があって、農地利用がやむを得ないと判断されるだけの理由があった場合のみ、除外の可能性があります。
その他の留意事項
-
- 目的実現のための、必要最小限な除外面積であるか。
- 法令等により定められている諸調整のほか、地元住民と合意が得られていること
こちらもチェックしてみてください。⇒農振農用地区域からのチェックリスト
まとめ
いかがでしょうか。青地を農地転用するにはかなり厳しい条件がいくつもあり、それらを乗り越えていかなければなりません。また、頑張れば必ずできる!という性質のものでもありません。
どうしても農地転用したい、やむを得ない理由があるときには、まずは専門家に相談することをお勧めします。時間はかかりますが要件が整っていれば実現の可能性はありますので、検討してみてください。
⇒ 例外的に農地転用が許可される施設はコレ。|不許可の例外とは