この記事のタイトルを見ても「何言ってるの?」とちょっと分かりにくいかもしれません。
農地が農地でなくなることを非農地化といい、その反対を農地化といいます。あなたは「農地も非農地も同じ土地なんだからどうってことないんじゃない?」と思うでしょうか。
ここでは非農地化と農地化について、それぞれ対立のある見解を見ていきます。
ではどうしてこの部分に対立するほどこだわるかというと、農地は農地法という法律によって制限されていることがあるのですが、非農地化するとその法律の適用がなくなり、自由になる部分がでてきてしまうことを心配するからです。
非農地化が簡単に認められてしまうと国で定めた農地法という法律が意味のないものになってしまうのです。
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農地が農地でなくなる場合(非農地化)
農地法上の農地であるか農地でないかは、その土地を客観的に見た現在の状況(現況)によって判断されます。ですから、一般論としては現況が農地でなければ原則として農地法の適用がなくなります。
この契約の時には農地だったものが、知事の許可を受ける前にAさんかBさん、もしくはAさんBさん両方の行為によって農地でなくなったり、またはAさんもBさんも無関係の理由で農地でなくなった場合、この売買契約の効果はどうなるでしょうか。
つまり、農地が農地でなくなること(非農地化)によって、この契約は完全に効力を生じて知事の許可がなくても所有権はAさんからBさんにいくのでしょうか。
非農地化については3つの対立する説があります。
①現況主義説
農地が一旦非農地化した以上、その原因を問わず非農地化の時点で売買契約は完全に効力を生じ、農地法の許可がなくても所有権はAさんからBさんにいく(所有権移転する)という説。
②クリーンハンド説
農地が非農地化したことにBさんに責任がない時は農地法の許可がなくても非農地化の時点で所有権は移転する、という説。
③折衷説
①と②を合わせた説です。
原則として非農地化した原因を問わず非農地化の時点で許可なしに所有権移転の効力を生ずるが、その土地周辺の客観的な状況をみて、農地法が守ろうとする利益にたいする実害があるときには、例外的に許可がなければ所有権移転の効力を生ずるという説。
支持される説は・・・
①と②をいいとこ取りした③の折衷説が支持されるようです。
農地法が農地のことを許可制度によって厳しく規制しているのは、農業の安定や生産力の維持向上を図るという国の農業政策に基づくものです。
②のクリーンハンド説ではBさんの責任で非農地化したかどうかという、本来はAさんとBさんの私的な利益を調整するための事柄で国の政策が左右されてしまう事になりかねないです。
また、①の現況主義では無許可で転用し放題となって許可制度の意味がなくなってしまいます。
以上の理由があり、裁判所では③の折衷説に沿った判断をしています。
非農地が農地になった場合(農地化)
上記の非農地化の場合とは逆に、非農地が農地になった場合、その土地は農地としてその所有権移動について農地法の許可を必要とするか、という問題についても対立があります。
①未墾地などの非農地が人の手によって農地化した場合、その農地化が正当な権原に基づいて行われたときは農地法上の農地と言えるが、不法な開墾によって農地化したものであるときは農地とはいえない、という説。
②不法開墾によって農地化した場合でも現に農地化している以上農地というべきである、という説
この場合はどちらの説によっても農地として扱われて、あとからEさんがその農地を買う場合には農地法の許可が必要です。
ところが
この場合は①説では農地法の農地として扱われません。したがってCさんがこの土地を第三者に売る時には3条または5条の許可が要らないばかりでなく、もう一度非農地化するにも4条の許可を必要としません。
これに対して、②の説によれば農地法の農地として扱うので、非農地化するには4条の許可を、売る時には3条または5条の許可を必要とする事になります。
支持される説
どちらの説を支持すべきでしょうか。
②の説では正当な土地所有者がその所有権を売買するのにも、他人の不当な行為のせいで許可を取得しなければならないという余計な負担を負わされることになるので妥当ではないといえます。
従って①説を支持すべきとされています。①説ならば農地法上の国の利益も損なうことはないからです。
まとめ
いかがでしょうか。今回は裁判所の判例を題材にとりあげてみましたので独特の回りくどい言い回しがあります。しかし、言いたいことはシンプルです。
結論としては、非農地化したとしても農地法上の許可を得ないで勝手にやってもいいということにはならない、ということを表しています。
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。お疲れ様でした。