農地転用の許可を申請しようとして下調べをして、農業委員会に相談に行ったら、役所のホームページやリーフレットのリストには載っていなかったものを要求されたことはないですか?
「え?なんでそれが必要なの?だったら最初からホームページにも書いてくれればいいのに。。。」
そんな風に思いますよね、納得いきませんよね。
しかし私たちの想いとは別に、農地法所定の許可を得るときには農地法に定められている提出書類の他にも何らかの書類の提出を求められることがあります。
何のために必要?
農業委員会はなぜその承諾書の提出を求めているのかというと、農地転用の許可を与えるかどうかを判断する為の資料を集めるためです。
この農地を転用することが周辺の農地に影響を及ぼすということは通常ありうることなので、隣接農地の所有者がこれによって起こりうる被害を了承しているかどうかを知るための資料として見たいということです。
何かあった時の責任のよりどころを決めておきたいというのが本音です。トラブルになった時のことを考えて、事前に対策をしておきたいのです。
つまり、農業委員会にとっては、隣接農地所有者がこの事情に対して了承しているのであれば許可はしやすいな、という判断材料のひとつになるわけです。
このことは、これから転用するために農地を売りたい売り主にとってはプラスに働くことではありますが、だからと言って売り主に隣接農地所有者の承諾を取り付けてくる義務が課されているわけではありません。
近隣農地の所有者の保護は?
また、逆に近隣農地の所有者は日照や通風などの具体的な利益を直接保護されているわけではありません。
ですのでこの農地転用の許可に対して取り消しを求める法律上の利益は、無いこととされています。具体的には裁判所で以下の様な判例がでています。
農地転用によって、隣接農地の日照、通風等が阻害されて農作物の収穫が激減して、農地としての効用が失われるおそれがあるとしても、それは当該許可自体によって直接もたらされる法律上の効果ではなく、転用後の本件畑地上に特定の建物が築造されることによる事実上の影響にすぎないので、隣接農地所有者は当該許可の取消を求めるにつき法律上の利益を有せず原告適格を有さない。
つまり、近隣農地所有者の方は日照、通風をさえぎられても文句を言えない立場だということです。実際には文句を言うことはできますが、裁判で争うことになったら負けが確定しているということです。
もし自分がその周辺農地所有者の立場だったら、
「そんなリスクの多い近隣地の農地転用などを、やすやす認めるわけにはいかないぞ」
という気持ちになってしまうかもしれません。
「はいはい、どうぞ」と気軽に承諾書にサインなどしたくないかもしれません。
解決方法
- 農業委員会は承諾書が必要だという。
- 周辺の方たちは承諾してくれない。
双方がリスクを背負いたくないというこの状況で、なんとか許可まで持って行くにはご自身が責任のよりどころとなってみてはいかがでしょうか。
農地転用をしたいあなたが、工事業者さんなどとタッグを組んで、
「万が一何かのトラブルで近隣の方からクレームが出た際には私たちが窓口になってきちんと納得いくまで説明します。」
という趣旨の文書を農業委員会に提出してみてください。
もともと隣接農地の所有者の承諾書という文書は必須のものではない可能性があります。こんなときは柔軟な考え方で、何が問題となっていて、他に解決する方法がないか探してみて欲しいのです。
担当官の裁量によるところも大きいですが、責任のよりどころさえはっきりすれば許可が出るということもあるのです。ぜひ参考にしてください。