産廃収集運搬業許可|ウチはちょっとだから安心?多量排出事業者とは

1000トン

産業廃棄物は適正に処理さえすればいくら排出してもいいのでしょうか。

もちろんそういうものではありません。最終処分場では埋め立てることになりますから、そんなことをしていたら埋立地だらけになってしまいます。というか、そもそもそんなに埋立地をつくれませんよね。

廃棄物処理法により、多量の産業廃棄物を出す事業者はその事業場から出す産業廃棄物を減らすことと、その処理についての計画を作成し、都道府県知事に報告することが義務付けられています。

また、その処理計画の実施の状況についても都道府県知事に報告しなければなりません。

事業者から提出された処理計画及び実施状況報告の内容はインターネットに公表され、情報公開されます。行政がこうした対応をとることで、事業者が自主的に産業廃棄物の減量化に取り組むことを期待しようというものです。

このページでは多量排出事業者について解説していきます。なりたくてなるものではありませんが、多量排出事業者にはならないようにしましょう。

目次

多量排出事業者とは

それではその処理計画や近況報告をしなければならない「多量排出事業者」とは具体的にはどういう事業者でしょうか。

少しややこしいですが、法で定める「多量排出事業者」とは、その事業活動に伴い多量の産業廃棄物を生ずる事業場を設置している事業者で、産業廃棄物の前年度の発生量が1000トン以上、または特別管理産業廃棄物の前年度の発生量が50トン以上である事業場を設置している事業者のことをいいます。

注意して欲しいのは、例えば建設業の場合、産業廃棄物を排出する現場(事業場)ごとではなく、その事業場を管理(設置)している支店(事業者)単位で発生量を合算するということです。

たとえば、静岡県内に3つの工事現場を支店が管理しているとして、その3つの工事現場の産業廃棄物の合計が1000トン(特別管理産業廃棄物なら50トン)以上になる場合、その支店は多量排出事業者に該当します。

全体の1%弱が全体の60%以上

この1000トンという基準は次のように定められました。

個人的には単純にキリがいいというのもあると思うのですが、平成12年の法改正のタイミングで実施した調査では、年間発生量が1000トンを超える事業場の割合について検討した結果、下水及び工業関係を除いた場合、事業場数にして全体の1%弱、発生量にして全体の60%以上がカバーされることとなる調査結果が出たのです。

繰り返しますが、1%弱の事業場が全体の60%以上もの産業廃棄物を排出していたのです。とても偏っていますよね。

女性社員A_気づく_01

したがって、この発生量が1000トンを超える事業場を設置している事業者を多量排出事業者と定めて管理することによって、都道府県は廃棄物の総合的な減量化方策をより効果的に進められると期待しているわけです。

発生量の考え方(把握時点)

発生量は、一般的には廃棄物の処理として何の操作も加えない時点での量で考えます。

しかしながら、事業活動の内容や廃棄物の種類によっては生産工程の中で脱水等の減量操作がされることがあります。

そこで発生量の考え方として、生産工程の中で行われる減量操作等の行程を経て発生する場合はその発生時点での量とし、生産工程を経た後に事業場内の施設で廃棄物の処理としての操作を経て発生する場合にはその処理工程の前での量とするとしています。

発生量は・・・
生産工程最中の減量操作はOK!
生産工程後の廃棄物の処理としての減量操作は処理前までで把握!

 

例:汚泥

汚泥については、その脱水乾燥前と、脱水乾燥後では重量が大きく異なるので注意が必要です。上の考え方に基づくと以下のようになります。

製品の生産工程中に脱水乾燥工程が組み込まれている場合

その脱水乾燥工程後の重量とします。

同一敷地内に脱水乾燥施設があり、その目的が廃棄物処理としての脱水乾燥と捉えられる場合

その脱水乾燥工程前の重量とします。

施設から脱水乾燥等の工程を経ずに発生する場合

これはそのままその発生時点での重量とします。

処理計画の作成単位

 

製造業等

事業場ごとに処理計画及び実施状況報告を作成します。多量排出事業者にあたるかどうかは事業場ごとに判断します。

なお、同一敷地内に関連会社の事業場があり、一体的に産業廃棄物の処理を行っている場合には処理計画等の中に関連会社の事業場から生じる産業廃棄物の処理を含めることができます。

建設業等

区域内の作業所を総括的に管理している支店ごとに処理計画及び実施状況報告を作成します。なお、同一敷地内に関連会社のの事業場がある場合は製造業と同様です。

建設工事においては、建設工事の注文者、注文者から直接工事を請け負う元請業者、元請業者から工事を請け負う下請負人など、関係者が多数おり、関係が複雑になっているため、廃棄物処理について責任の所在が曖昧になってしまう恐れがあります。

きちんと決めておかないと、後で責任のなすりつけ合いになって困りますよね。

そのため、平成22年の法改正により建設廃棄物については実際の工事は下請業者が行う場合でも、発注者から直接工事を請け負った元請業者を排出事業者とし、処理責任を負わせることとしました。工事の上流にいる業者ですので、指導監督の責任があります。

処理計画の作成提出

多量排出事業者は、処理計画を作成し、都道府県知事に提出しなければなりません。

また、都道府県知事は

    • 住民への情報提供、周知徹底
    • 事業者の自主的な排出抑制、再利用
    • 減量化への取り組みの推進

これらを理由に、提出された処理計画の内容をインターネットに公表します。

提出期限

処理計画の都道府県知事への提出期限は当該年度の6月30日です。

提出者

製造業の場合は支店等を管理している代表者です。(工場長、工場管理者、支店長など)

建設業の場合は原則として支店等の代表者です。(支店長など)

実施状況の報告

多量排出事業者は上で作成した処理計画の実施の状況について都道府県知事に報告しなければなりません。また、この内容もインターネットにより公表されます。

これを公表する理由は

    • 事業者の計画的な減量や取組状況の情報の住民への提供
    • 関係者への周知
    • 創意工夫のある取組があった時の住民や関係者から
    • より高いレベルの処理計画の策定
    • 廃棄物の総合的な減量、適正処理の推進

とされています。

提出期限と提出者については処理計画と同様です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。ここまで読んでいただいたあなたにはご理解いただけたと思いますが、多量排出事業者に指定されることでのメリットは1つもありません。処理計画の作成、報告、公表のどこにも全くいい事がないのです。

この制度をひとことで言うと、産業廃棄物を減らすことを目指すために作られたかなり厳しい制度ということで間違いありません。

この記事を最後まで読んでいただいたあなたの会社は絶対に1%に該当しないようにしましょう。

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