建設業の社会保険未加入問題の全体像
ご存知ですか⁈
社会保険は加入の義務があります。法人及び5人以上の従業員がいる個人事業主は一部の例外を除いて社会保険に加入しなければいけません。
しかし、本来加入していなければならないはずの社会保険に、加入していない労働者や一人親方が多いのです。
この記事では、なぜ社会保険への未加入が問題になるのかを解説していきたいと思います。
社会保険未加入が起こす問題点
社会保険未加入の業者があることで起こる問題点が2つあります。
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- 処遇の低さによる就職不人気
- 受注競争の不公正
ひとつずつ見ていきましょう。
1.処遇の低さによる就職不人気
社会保険とはここでは雇用保険、健康保険、厚生年金保険のことを言っていますが、これらは暮らしのリスクを支え合うための仕組みです。
誰にでも起こりうる、「失業したとき」「病気やケガで働けなくなったとき」「老後の生活」などの不安な状況になったときに手助けしてくれるものです。とても心強いものです。
そして、この社会保険への加入は身内や知り合い以外の人を採用する場合には最低条件とも言われています。
労働者側から言うと、社会保険に入ってない会社には不安を感じるものです。安心して働きたいという思いは誰しもありますよね。社会保険に加入していない会社を敬遠してしまうのも仕方のない事だといえます。
このことが若者からの建設業の現場への就職不人気となり、慢性的な人手不足→技術継承の障壁→技術者不足となり、負の連鎖に向かってしまうのです。
2.受注競争の不公正
社会保険にかかる保険料は法定福利費として、「通常必要と認められる原価」に含められるべきものだとされているので、見積には下請業者が負担している社会保険料も考慮して金額を決めるべきとされています。
つまり、社会保険に入っている下請業者は見積金額が高くなるということです。このことを逆手に取ると、社会保険に加入していない業者は、社会保険料分を見積りに含める必要が無いので加入している業者よりも安い見積もりを出すことができ、受注競争において有利となるのです。
以上の事から、ルールを守って社会保険に入ると受注競争において不利という、ある意味正直者が報われないというような、不公正な環境ができてしまうのです。
国土交通省が危機感を抱いています。
以上のような理由と人口の少子化、技術者の高齢化などもあわせて、建設業に従事する人口も減少しています。
今では、東北や熊本の震災や、多くの台風などの自然災害の復旧復興には建設業者のちからは欠かせません。一刻を争う状況もたくさんあり、人手不足は深刻な問題です。
また、2020年の東京オリンピックに向けて建設需要が高まりつつあります。
すでに建設業者の人材確保が始まっているそうです。オリンピックに集中してしまうと復興がおろそかになる恐れもあるので、建設従業者の減少に歯止めをかけようと、国土交通省は社会保険への加入を徹底して指導しています。
社会保険へ新規に加入するには
国土交通省が頑張ればこの問題の解決が図れるというわけではありません。
行政や、元請業者、下請業者が一体となって、社会保険加入の推進を図る必要があるのではないでしょうか。
新規に社会保険へ加入する場合の手続きを簡単に紹介します
健康保険
健康保険は業界の健康保険組合で手続きできます。
そのような健康保険組合に加入できない時には「協会けんぽ」に加入します。
年金
年金は厚生年金に加入します。
地元の年金事務所で手続きをとりましょう
雇用保険
雇用保険と、もう一つの社会保険である労災保険は労働基準監督署で労働保険加入の手続きを取り、ハローワークで労働者一人ひとりに関する資格の取得・喪失の手続きを取ります。
建設業の社会保険未加入問題の全体像 まとめ
社会保険の未加入は建設業界において、就職不人気、受注競争の不公正という2つのマイナス要素を生み出すことになってしまっています。
このことで建設業界全体がさらに人手不足になり、災害復興をはじめ、公共の建設物やオリンピック関係などに重大な影響を与えてしまいます。
この一連の流れは私たち国民にとって、全く他人事ではない一大事です。
それだけ建設業という業界は私たちの暮らしを考える上では無くてはならない、日常生活の基盤といっても過言ではない存在です。
建設業に務める方々が安心して働けるよう、どうか皆さん社会保険への加入をお願いしたいと思います。