建設業許可|個人事業主から法人成りするときに気を付ける事
いまあなたが個人事業主として建設業を営んでいて、建設業許可をすでに受けているとした場合、もしかしたらこんなことが気になっていませんか?
「いつかは事業を大きくするために法人化したいんだけど、法人化するときにはこの許可は引き継げるのだろうか。。」
ここでは個人事業主の皆さんがよく勘違いしがちな、そんな疑問にお応えしていきます。
この記事を読んでいただくことで、会社を法人化(法人成りといいます)することの全体像を掴んでもらうことができます。
法人成り新規申請とは
結論からいいますと
Q.「法人化するときに個人事業としての建設業許可は引き継げるのか?」
という問いへの答えはnnA.「引き継げません。」となります。
個人事業主(自営業)と法人(会社)は違うものとして扱われます。どちらも自分が代表者だと言いたいですが、個人と法人は別人格ということになります。
ですので個人時代の許可は廃業届を提出して、その後法人としての新規許可申請を行う必要があります。
この事を法人成り(ほうじんなり)新規申請といいます。
引き継げるものは
この「法人成り新規申請」は都道府県によってかなり取り扱いが異なりますので事前に自治体に確認が必要です。
例えば個人の許可を廃業して法人で許可を申請している期間に空白ができないような配慮をもうけていたり、個人の時の許可番号を引き継げるなど、個人と法人の実態などを考慮してくれる都道府県もあります。
また、一定の要件を満たすことで経営事項審査における実績の引き継ぎができます。
一定の要件とは
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- 個人企業主が設立した新規の法人であること(既存の法人への組織変更はダメ)
- 許可申請時点で個人の許可が有効であること
- 建設業に係る資産・負債が個人から法人に引き継がれていること
- 新設法人の代表者および主要株主が前事業主または前事業主の親族であること
- 個人時代の経営業務の管理責任者が引き続き法人の経営業務の管理責任者に就任すること
- 新規許可申請の財産的要件を満たすこと
- 新設法人が第一期の確定申請を行うまでに許可申請すること
注意点
①設立時の資本金を500万円以上にする(第一期決算終了までは無条件で財産的要件を満たすことになるため。)
②定款の事業目的欄に将来建設業許可を取る予定の業種に関する具体的な文言を入れておく(土木工事業、電気工事業など)
③個人事業主を取締役にしておくこと(必然的に経営業務の管理者の要件を満たすため)
④将来自分の息子に許可を継がせる場合は息子が経営業務の管理者になれるように役員としておく。
個人の許可は一代限り
法人化について書いてきましたが、それでは個人から法人化せずに跡取り息子などに事業を引き継ぐ場合はどうでしょうか。
これもやはり、許可は引き継ぐことはできません。個人事業が受けた許可はまさにその個人のものなのです。
自動車の運転免許証などと同じように、引き継げる性質のものではないのです。
新たに息子の代で取り直すしかありません。
そうするとやはり次のような法人化のメリットが見えてきます。
法人化のメリット
対外的信用
まずは対外的な信用度が高くなるといえます。個人の時よりも金融機関からの融資を受けやすくなるでしょう。
また、正社員として働きたいという人は多いので、人材の採用についても法人の方が有利でしょう。
さらに、一般的にも会社となることで周りからは一目置かれます。
節税になる
個人のときは所得に応じて税金を多くはらっていく累進税率という制度ですが、法人化することで原則一定税率になります。
そのため売り上げが大きい場合は法人税のほうが有利です。また、経費として認められる費用が増えます。
有限責任
個人事業主は無限責任です。たとえば多額の借金を抱えてしまった場合、事業の財産で足りなければ個人の財産で支払っていかなければなりません。
それに対して法人(株式会社)は有限責任です。会社の財産だけでは返せなくても個人の財産を差し出す必要はありません。
法人化への検討
法人化にはこの他にも多くのメリットがあります。また、個人事業の建設業許可は引き継げず、取り直ししなければならないというのもわかっていただけたと思います。
そうすると個人事業のあなたがこれから新規に建設業許可を申請しようとするとき、このタイミングで法人化すべきかどうかという悩みどころだと思います。
近い将来に法人化をお考えであれば建設業許可はその時に合わせて申請するというのも一つの手です。
特に今はまだ法人化の予定がないけど、許可はすぐに欲しいというのでしたらそれも悩みどころでしょう。二度手間と二重の費用は掛けたくないものです。
しかしここで考えて欲しいのです。
法人化すると経理処理や税務申告など処理が複雑になり社会保険などのコストもついてまわります。その道の専門家を頼むことになるなど、いろいろ費用はかかってくることになります。
ですので個人事業から法人化という世間の流れがあったとしても、個人事業のままでもいい場合はあると思います。
結局、個人事業のまま建設業許可をとるか、会社組織に変更のタイミングで許可をとるか(または許可をとるタイミングで会社組織に変更してしまうか)はそれぞれの皆さんを取り巻く環境や戦略などでかわり、どちらがいいとは言えません。
まずは法人化することの意義を分析し、十分に検討してみていただき、あわせて建設業許可も考えてください。
許可の取り直しの手間やコストのことだけで決めてしまうのは少し安易すぎるかもしれません。