建設業法をわかりやすく解説|安すぎない?不当に低い請負代金とは

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工事の請負金額は請負う側にしたらとても気になるところです。

少しでも高い方がいいですが、いろいろ事情がありますよね。いつもお世話になっている元請業者さんは仕事を回してくれるし、ある程度のことは受け入れなければいけません。大人の事情というやつですよね。

でもちょっと待ってください、その金額、安すぎませんか。

不当に低い請負代金は建設業法で禁止されています。この記事を読んでいただければ、どういう場合が禁止に当たるのかをご理解いただけます。

ところで、民法では、契約は当事者同士の合意だけで成立するといわれています。

例えば日常的な買い物も売買契約という契約ですが、お金を払う側としては「きちんとした品質で適正に安い」という契約ができたら誰でも嬉しいものですよね。とても得した気分になります。

その上で、捉え方に個人差はあると思いますが、「できるだけ安い金額でお願いしたい」または「金額は安いに越したことはない」と思って行動する部分は少なからずあるのではないでしょうか。もちろん「安かろう悪かろう」は避けたいですけどね。

しかしながら、民法の理屈からいきますと、

    • 売り手側は何にいくらの値段をつけるのも基本的には自由です。
    • 買い手側も買いたいと思ったものに相場の倍の金額を払って買うことも自由です。

これはお互いが対等な立場という前提をもとに自由なのです。もし嫌なら買ったり売ったりしなければいいだけですからね。

しかし、建設業の下請契約では話が違ってきます。あまりに安い代金で契約を結ぶことは法律で禁止されているのです。

この記事では、建設業法で禁止されている不当に低い請負代金についてガイドラインに添ってできるだけわかりやすい言葉で解説していきます。

目次

こんなケースは法律違反

最初に、このようなケースでは法律違反となります。

①元請業者が自社の予算額のみを基準として下請業者と協議を行うことなく、下請業者の出した見積額を大幅に下回る額で契約を締結する
②元請業者が「この条件をのめないなら、今後あなたの会社(下請業者)との取引どうしようかなぁ~」などと今後の不利な取り扱いを匂わせて、従来の価格を大幅に下回る額で契約を締結する
③元請業者が下請代金の増額に応じることなく下請業者に対して追加工事を施工させる
④元請業者が、契約が決まった後に取り決めた代金を一方的に減額する

どれも元請業者の行為について禁止していることがわかっていただけると思います。この法律では、弱い立場の下請業者を守ろうという趣旨があるのです。

建設業法の条文を載せます。これは珍しく非常にわかりやすい文章で、きちんと下請業者のことを守っている条文だと思います。

(不当に低い請負代金の禁止)
注文者は、自己の取引上の地位不当に利用して、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない。

建設業法第19条の3

ポイントは3つあります。

    1. 取引上の地位
    2. 地位の不当利用
    3. 通常必要と認められる原価

 

ここでは下請契約について解説していきますので、この条文で言う「注文者」とは元請業者で、下請業者が請負人となります。不当に低い請負代金2

それではひとつずつ見ていきましょう。

1.取引上の地位とは

元請業者と下請業者は本来なら同等の地位で契約するのが契約の建前です。しかし、現実にはそうは行きませんよね。

下請業者を選択、指名するのは元請業者の権利です。どうしても仕事をもらう立場からは強く出れないのが普通だと思います。

下請業者にとって、元請業者との取引の継続は事業経営の大きな要因です。この取引を打ち切りにされては困る下請業者が、

「元請業者の著しく不利益な要請も受け入れざるを得ない状況」ーこれが条文で言う取引上の地位です。もっと言うと元請業者の取引上の優越的な地位です。

少し古いデータですが、平成18年の国土交通省の調査によれば、アンケートに回答した下請業者の25.4%が元請業者との取引上の課題として、「請負金額の原価割れ」をあげました。また、多くの下請業者が「断れば仕事は二度と来ない」「断ったらオシマイの世界」と考えていると指摘しています。

2.地位の不当利用とは

元請業者が、下請業者の指名権・選択権を背景に優越的な地位を使って下請業者を経済的に不当に追い込むような取引を強制したかどうかについては、下請代金の決定について両者で十分な協議が行われたかどうかで判断されます。

例えば下請業者との十分な

協議をせずに元請業者が一方的に価格を決定して強要する指値発注は、地位の不当利用にあたるとされています。

%e5%a5%b3%e6%80%a7%e7%a4%be%e5%93%a1a_%e6%8c%87%e7%a4%ba%e6%a3%92_01・元請下請けの間で十分な協議がされないで結ばれた契約は指値発注がされているかもしれません。指値発注はそれ自体でスグに違法というわけではないのですが、ツッコミどころが多く指摘されています。
指値発注の違法性とつっこみどころ

請負代金の決定にあたっては、責任施工範囲、工事の難易度などを考慮した合理的な金額にすることが必要です。これが守られないと無理な手段、工期などを下請業者に強いることになり、手抜き工事や不良工事の原因となってしまいます。

そして不良工事の責任を最終的に負うのは元請業者です。ここをきちんとすることは自分を守るためでもあると言えるでしょう。

3.通常必要と認められる原価とは

nその下請工事を行う地域で、一般的に必要と認められる金額です。n

    • 直接工事費
    • 共通仮設費・現場管理費などの間接工事費
    • 一般管理費(利潤相当額は含まない)

これらの合計金額を

    • 実行予算
    • 再下請先、資材業者との取引状況
    • その地域での同種工事の請負代金

などから判断することになります。

建設業法をわかりやすく解説|安すぎない?不当に低い請負代金とはまとめ

以上のことから、①強い立場にある元請業者が、②その地位を利用して、③通常必要となる原価より安い金額で下請工事を請け負わせることを禁止しています。繰り返しになりますが、これは下請業者を守る為のルールです。ここで気をつけて欲しいのは、一次下請業者も二次下請業者との関係では元請業者です。法律により守られる立場から法律を守らなければならない立場にもなり得るということです。

この競争社会ですから、元請業者も発注者からの受注をするのに精一杯頑張っているので、どうしても金額はシビアになってきてしまうと思います。この部分は皆さん苦労されていると思います。

しかし、業界全体が行き過ぎた価格競争に向かわないようになれば、それは全員の利益になるはずです。

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