建設廃棄物・・その処理責任の例外についてみてみよう

建設工事の現場から出る建設廃棄物について、その処理責任を負うのは誰でしょう。

この場合、排出事業者は元請業者になるので、原則としては元請業者に責任があります。でも、例外もあります。

ここでは、どのような場合にだれに責任があって、何に気をつけなければいけないのかを「廃棄物の処及び清掃に関する法律」(以下、廃棄物処理法という)に沿って詳しく見ていきたいと思います。

目次

建設廃棄物の処理責任は元請業者にあり

%e5%a5%b3%e6%80%a7%e7%a4%be%e5%93%a1a_%e6%8c%87%e7%a4%ba%e6%a3%92_01平成22年に、廃棄物処理法が改正されています。その時に、建設系廃棄物の排出事業者は直接工事を請負った元請業者である、ということが明確に定義されました。〈廃棄物処理法第21条の3第1項〉

このことにより、元請業者は発生した廃棄物を自ら適正に処理し、または廃棄物処理業者などに適正に処理委託する責任を負うことが明確になりました。

下請け業者は、産業廃棄物収集運搬業や廃棄物処理業の許可がなければ建設工事の現場で出た産業廃棄物を運搬したり処理したりできないということになったわけです。

もし、許可を持たない下請け業者が元請業者から委託されて、この廃棄物を運搬したり処理した場合には、元請業者は委託基準違反に、下請け業者は無許可営業ということで罰せられます。

この場合の罰則は、5年以下の懲役および1,000万円以下(法人は3億円以下)の罰金などとなります。

元請業者に関する例外規定

原則として、建設廃棄物の処理責任は元請業者にありますが、一定の条件を満たせば、下請け業者を排出事業者とみなすという例外規定があります。この「みなし排出事業者」となった下請け業者には、産業廃棄物保管基準が適用され、その遵守が義務づけられます。

元請業者と下請け業者の双方に産業廃棄物保管基準を守る責任が発生するということです。

    1. 下請け業者が建設工事現場内で保管をする場合
    2. 下請け業者が一定の条件で運搬する場合
    3. 元請業者から委託を受けずに下請け業者が他人に委託する場合

以上、3つのケースがありますので、順にみていきましょう。

1.下請け業者が建設工事現場内で保管をする場合

元請業者が建設工事にともなって出る廃棄物を現場内で保管する場合と同じように、下請け業者が現場内保管するときにも産業廃棄物保管基準が適用されます。〈廃棄物処理法第21条の3第2項〉

もし、これを守らずに下請け業者が産業廃棄物保管基準に適合しない保管をしたときには、改善命令の対象となります。この改善命令に従わない場合には、罰則(3年以下の懲役および300万円以下の罰金)が適用されることになります。

2.下請け業者が一定の条件で運搬する場合

以下の1~6すべての条件を満たせば、産業廃棄物収集運搬業の許可を持たない下請け業者でも建設工事の現場から出た産業廃棄物を運搬することができます。〈廃棄物処理法第21条の3第3項〉

    1. 解体工事、新築工事、増築工事以外の建設工事で、発注者からの元請負代金が500万円以下の工事、もしくは引き渡しがされた建築物などの瑕疵(欠陥やミス)の補修工事で、請負代金相当額が500万円以下の工事、のいずれかに該当する工事に伴って生じる廃棄物であること
    2. 特別管理廃棄物(PCB廃棄物、廃石綿など)以外の廃棄物の運搬であること
    3. 1回あたりに運搬される量が1㎥以下であることが明らかになるように区分して運搬されること
    4. 廃棄物が生じる事業場の所在地の属する都道府県または隣接する都道府県の区域内にある施設または積替え保管場所(元請が所有権または使用権原を持つ施設、元請が賃借している施設、同じ元請の現場、元請が委託契約を締結した施設に限る)に運搬されるもの%e8%87%aa%e3%82%89%e9%81%8b%e6%90%ac
    5. 運搬途中において保管が行われないこと
    6. 個別の建設工事に係る書面による請負契約で、下請負人が運搬を行うことが定められていること

書類の携行が必要

この場合、収集運搬業の許可がない下請け業者でも運搬することができますが、運搬時には以下の書類を携行しなければいけません。

  • 「環境省令で定める廃棄物であることを証する書面」・・・平成23年2月4日環廃対発第110204005号、環廃産発第110204002号の別記様式。元請業者および下請け業者の押印または署名が必要。
  • 「当該運搬が建設工事に係る書面による請負契約で定めるところにより自ら運搬を行うものであることを証する書面・・・請負契約が基本契約による場合は、「請負契約の基本契約書の写し」もしくは基本契約に基づく請負契約であることが確認できる「当該注文請書」など。※これについては、各社で判断が異なると思われます。

 

すべてを満たすことが必要

繰り返しになりますが以上の1~6のすべてを満たすことがこの特例の条件なので、このうちの一つでも満たさずに許可を持たない下請け業者が産業廃棄物の運搬をしてしまった場合には、下請け業者は無許可営業ということになってしまいます。

また、その運搬が元請業者の委託(指示や示唆による場合も含む)によって行われたものであれば、元請業者は委託基準違反になってしまいます。

ただ、下請け業者でも許可なく産業廃棄物を運搬できるというこの特例は、極めて限定的に適用される規定なので、事前に自治体の産業廃棄物の担当窓口に相談するなどして確認したほうがいいでしょう。

また、産業廃棄物処理基準の遵守と改善命令の規定が適用されることになりますので気をつけましょう。
この規定が適用された廃棄物であっても、元請業者の責任がなくなるわけではなく、排出事業者として処分業者と委託契約を結び、マニフェストを交付しなければなりません。

3.元請業者から委託を受けずに下請け業者が他人に委託する場合

元請業者が建設工事に伴って生じた廃棄物を放置したまま破産したなどのやむを得ない事情により、下請け業者が元請業者から委託を受けることができずに自ら産業廃棄物の処理を委託する場合には、下請け業者を排出事業者とみなして(みなし排出事業者)、下請け業者に委託基準およびマニフェストを交付する義務が適用されます。〈廃棄物処理法第21条の3第4項〉

この場合、下請け業者に処理責任があるということになります。

あくまでもこれは例外的な事例になります。

まとめ

いかがでしたか。ここまで見てきたようにいくつかの例外規定はありますが、原則として排出事業者は元請業者だということに変わりはありません。

不法投棄される産業廃棄物の中で一番大きな割合を占めるものが建設廃棄物と言われています。あなたの工事現場から出た産業廃棄物が不法投棄されることのないよう、元請業者はきちんと計画を立てて処理にあたることをおすすめします。

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