建設業法をわかりやすく解説|短すぎ!その工期では無理です!

あるアンケート調査で、5割近くの現場が発注者の工期設定に対してこう回答したそうです。「その工期、短すぎる。。。」短すぎる工期の設定が、工事現場で働く人の休日確保へのシワ寄せや、効率的な施工への支障の原因になると問題になっているという記事がありました。

こういった問題が検討され、令和2年10月の建設業法の改正に、新しい禁止規定が盛り込まれることとなりました。この記事では、ガイドラインに沿って建設業法上の「著しく短い工期の禁止」について解説していきます。

目次

こんなケースは建設業法上、違反となるおそれがあります。

  • 元請業者が、発注者からの早期の引き渡しに応じるために、下請け業者に対して一方的に、通常よりもかなり短い工期で下請契約をした
  • 下請け業者が元請業者から求められた工事内容を施工するために、通常必要となる工期を提示したのに、それよりもかなり短い工期で下請契約を締結した
  • 工事全体の一時中止、前工程の遅れ、元請業者が追加工事の指示をしたなど、下請け業者側には落ち度のない理由によって契約当初の工期を変更する際に、通常よりもかなり短い工期で下請契約を締結した

上記の場合、設定された工期があまりにも短い場合、元請業者は建設業法に違反する恐れがあります。具体的には建設業法第19条の5(著しく短い工期の禁止)に違反する恐れがあります。

著しく短い工期の禁止

第十九条の五 注文者は、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない。

建設業で働く人の年間の実労働時間は、すべての産業の平均より相当長い状況になっています。残業が多く、土日祝日も出勤するという長時間労働が業界的に当たり前になってきてしまっているのです。

「どうせ建設業は長時間労働が当たり前だ」という考えでは働き方改革が進みません。また、事故の発生や手抜き工事にもつながる恐れがあります。ですので、適正な工期設定を行う必要があり、通常認められる期間と比べて著しく短い工期の請負契約は禁止されることとなりました。著しく短い期間とは

それでは、「通常必要と認められる期間に比べて著しく短い期間」とは、どれくらいのことをいうのでしょうか。

それは、中央建設業審議会が作成した工期に関する基準(以下、工期基準といいます)に照らして不適正に短いと判断された期間を言います。具体的には、下請契約ごとに

  • 見積の際に元請業者が示した条件
  • 下請業者が提出した見積の内容
  • 締結された請負契約の内容
  • その工期を前提として契約をした事情
  • 下請業者が「著しく短い工期」と認識する考え方
  • 元請業者の工期の考え方
  • 過去の同種類似工事の実績
  • 賃金台帳

等をもとに

  1. 工期基準の内容を踏まえていないために短くなった場合
  2. 過去の同種類似工事の工期と比べて短い場合
  3. 下請業者が見積書で示した工期と比べて短い場合

これらの原因で工期が短くなることによって、下請業者が違法な長時間労働などの不適正な状態で工事を施工することとなっていないかを総合的に考えて個別に判断します。

ただし、令和6年から建設業にも時間外労働の罰則付き上限規制が適用されることを踏まえて、たとえ元請業者と下請業者が合意している場合でも、違法な時間外労働時間を前提として設定される工期は「著しく短い工期」と判断されます。

契約変更にも適用される

この「著しく短い工期の禁止」は当初の契約の場面だけに限られません。

契約締結後に、下請業者側に落ち度のない理由によって、工事が契約どおり進行しなかったり工事内容の変更などにより、工期を変更する契約をする場合にも適用されます。

工期の変更時には争いが生じやすいため、当初の契約の時に、元請業者は、工期の変更をするときには、変更後の工期を建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比べて著しく短い期間としてはならない(建設工事標準下請け契約約款第17条)という規定を明記しておくことが重要です。

著しく短い工期の禁止 まとめ

現在建設業は、ほかの業界に比べてかなりの長時間労働で、それが当たり前となってしまっています。

長時間労働は、手抜き工事や事故の原因になる可能性があることから、著しく短い工期を禁止して、適正な工期を確保することになりました。

どれぐらいの工期が適正なのかは工期基準に照らし、総合的に判断することとしています。

ぜひ参考にしてください。

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