建設業法をわかりやすく解説|元請と下請けの見積り

日常生活の中で、大事なものを買うときには見積りを取りますよね。例えば車を買うとき、家を建てるとき、結婚式をあげるときなどが思い浮かびます。

見積りとはこのように、およそ高額なものの購入を検討するときの予算を準備するためのものです。

建設業界においても見積りは重要な役割を果たします。

ここでは元請業者と下請業者の見積りについて、建設業法ガイドラインにそって、できるだけわかりやすい言葉で解説していきます。

目次

見積り条件の提示

建設業法では、元請業者は、契約する前に具体的な内容を下請業者に提示して、その後下請業者がその工事の見積りをするために必要な一定の期間をもうける事が義務付けられています。 (建設業法20条3項)

建設業法は下請業者を守るために、

    1. 契約前に具体的な内容を提示
    2. 見積りをするための一定の期間を設ける

以上の2点を元請業者に義務付けています。

これは下請契約が適正に取り決められるために、

①下請業者が見積り落としなどの問題がないように検討する期間を確保すること

②請負代金の計算や、その他請負契約を結ぶための判断を行わせること

が必要であることを示しているのです。

違反行為の事例

上の義務を具体的にあてはめると、こういう場合は建設業法上違反となるおそれがあります。

    1. 元請業者が不明確な工事内容を提示して、あいまいな見積り条件で下請業者に見積りを行わせた場合
    2. 元請業者が下請業者から工事内容などの見積り条件に関する質問を受けたが、回答しなかった、またはあいまいな回答をした場合

また、次のような場合は建設業法違反です。

・元請業者が予定価格が700万円の下請契約を結ぶときに、見積り期間を3日として下請業者に見積りを行わせた適正な見積もりn

見積り条件の具体的内容

元請業者が下請業者に対して提示しなければならない具体的内容というのは、建設業法では、請負契約書に記載する事を義務付けられている事項のうち、請負代金の額をのぞく全ての事項になります。

13項目ありますので、簡単に示します。

見積り条件として提示しなければならない13のこと

①工事内容

一番重要なことです。しかしざっくり工事内容と言っても、これだけではよくわかりませんので、8つの事項に分類されます。

    1. 工事名称
    2. 施工場所
    3. 設計図書(数量等含む)
    4. 下請工事の責任施工範囲
    5. 下請工事の工程、工事全体の工程
    6. 見積条件と他工種との関係部位、特殊部分に関すること
    7. 施行環境、施行制約に関すること材料費、労災対策、産廃処理の費用の元請・下請間の費用負担区分

n

nその他12項目あります。ざっと目を通してください。n

 

    • ②工事着手の時期、工事完成の時期
    • ③請負代金の支払い時期、方法
    • ④設計変更、着工延期、工事中止などの申し出があった時の取り決め
    • ⑤天災その他不可抗力による工期変更、損害の算出方法の取り決め
    • ⑥価格の変動や変更に関すること
    • ⑦第三者が損害を受けた時の賠償金の取り決め
    • ⑧注文者が材料や機械を提供した時の取り決め
    • ⑨注文者が工事の完成を確認するための検査や引き渡しの時期についての取り決め
    • ⑩工事完成後の請負代金の支払い方法、時期
    • ⑪工事に欠陥などがあった時の保証保険契約の取り決め
    • ⑫工事の遅延利息、違約金、損害金についての取り決め
    • ⑬契約に関する紛争の解決方法

元請業者はこれらのことについて、具体的内容が確定していない部分については、その事を明確に示さなければなりません。

施工条件が確定していないなどの正当な理由がないのに、元請業者が下請業者に対して契約までの間に具体的な内容を提示しない場合には建設業法違反となります。

書面で提示することが望ましい

もし、これだけのことを口頭で言われてもちょっと困ってしまいますよね。メモを取るにしても大変です。元請業者にしても言った言わないや、記憶違いなどのトラブルを避けるためにも是非書面で出して欲しいところです。

普通は書面での提示だと思いますが、ガイドラインでは「望ましい」となっていて、義務にはされていません。

見積り条件の提示は書面での提示が「望ましい」に留まっていますが、下請工事の請負契約は書面で交わすことが義務付けられています。コチラで詳しく解説しています
建設業法をわかりやすく解説|契約はきちんと書面に残しましょう

また、元請業者は材料、機器、図面、書類、運搬、足場、養生、片付、安全などの作業内容を明確にしておくと良いです。これも望ましいとなっています。

予定価格の額に応じて見積り期間を設ける

元請業者は、下請業者が見積りを行うために必要な一定の期間をもうけなければなりません。

以下の3通りが建設業法により定められています。

工事1件の予定価格 見積り期間
500万円に満たない 1日以上
500万円以上5000万円未満 10日以上
5000万円以上 15日以上

この期間は下請業者に対する契約内容の提示から契約締結の日までの間にもうけなければならない期間です。間の期間なので、提示の日と締結の日は除きます。アだと中1日以上ということですね。

例:7月1日に契約の提示をした場合の最短の契約締結の日

アのとき:7月3日nnイのとき:7月12日

ウのとき:7月17日nnこの日以降に契約締結をすることになります。(ただし、やむを得ない事情がある時にはイウのときは5日以内に限って短縮できるとされています。)

なお、これは最短の期間ですので、元請業者は下請業者に対して十分な見積り期間を設定することが望ましいです。焦って作業をすると大事なところにミスがあったりしますからね。

平成29年度までに国土交通省は社会保険加入100%を目指しています。その一環で出すことになる法定福利費を内訳明示した見積書についてはコチラで解説しています。
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元請と下請けの見積り まとめ

いかがでしょうか。

適切な見積りのポイントとは、①契約前に、②具体的に、③書面で、④十分な期間でということになります。繰り返しになりますが、建設業法は下請企業を守るために作られています。それは建設業界全体のためになるからです。

これを読んでくださるあなたが守るべきルールを知り、激しい競争を勝ち残っていっていただけたら嬉しいです。是非参考にしてください。

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