産廃収集運搬業許可|PCB(ぴーしーびー)廃棄物の処理にかかる全体像
産廃処理業や建設業にかかわる許可について調べていると、普段の生活では聞き慣れない言葉が非常によく出てきます。「特別管理産業廃棄物収集運搬業」「特別管理産業廃棄物管理責任者」など漢字が長く続くものもありますが、アルファベットの略称も多くあります。
今回はそのなかのPCB廃棄物についてみていきます。
PCBとは
PCBは(Poly Chlorinated Biphenyl) の頭文字をとったもので、日本語では「ポリ塩化ビフェニル」と訳されます。
PCBの性質
PCBは化学的に非常に安定した物質です。安定しているというと良いことのように思えますが、「安定している」とは言い換えると「分解しにくい」ということで、それにより不都合なこともあります。
具体的には次のような性質を持つので、電気機器のトランスやコンデンサの絶縁油や熱交換器の熱媒体をはじめとして、塗料、ノーカーボン紙など、割と身近な製品にも幅広く利用されていました。
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- 水に極めて溶けにくい
- 沸点が高い
- 熱で分解しにくい
- 不燃性
- 電気絶縁性が高い
- 耐薬品性に優れる
PCBの毒性
しかし、以下の様な毒性があるため、昭和46年以降は日本では新たな製造が禁止されています。
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- 自然界ではほとんど分解されない
- 脂肪に溶けやすい
- 体内に蓄積する
- 発がん性が高い
- 内臓障害、皮膚障害、ホルモン異常等の原因になる
- 微量の摂取を続けることで中毒症状が起きる
昭和43年にカネミ油症事件がおきてその毒性が社会問題化しました。世界的にも一部のPCB使用地域から、全く使用していないはずの北極圏などへの汚染の拡大が報告されたため、国際的な規制の取り組みが始まり、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約が平成16年5月に発効しています。この条約ではPCBに関し、平成36年までの使用の全廃、平成40年までの適正な処分を求めており、日本では平成14年8月にこの条約を締結しています。
届出・保管
このような危険な廃棄物ですので、特別管理産業廃棄物に指定され、法律に基づく届出、適正保管及び定められた期限までに処理処分を行わなければなりません。この届出は年1回、毎年6月末までに継続して行うこととされています。
保管及び処分の状況の届出
PCB廃棄物を保管している事業者は毎年度、そのPCB廃棄物の保管及び処分の状況に関して都道府県知事に届け出なければなりません。
なお、都道府県知事は毎年度、事業者から提出された上記の届出書について一般に公表することとなっています。
届け出を行わなかったり、虚偽の届け出をすると6月以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます。
特別管理産業廃棄物管理責任者の設置
PCB廃棄物の処理を適正に行わせるために事業所ごとに「特別管理産業廃棄物管理責任者」を置かなければなりません。
この義務に違反すると30万円以下の罰金に処されます。
適正な保管方法
PCB廃棄物を保管する場合、通常の廃棄物の保管に加えて、廃棄物処理法に基づく「特別管理産業廃棄物保管基準」に従わなければなりません。
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- 周囲に囲いを設置する
- 見やすい箇所に特別管理産業廃棄物の保管場所である旨を表示した掲示板を設ける
- 飛散、流出、地下浸透、悪臭が発散しないように必要な措置を講ずる
- 保管場所にネズミ、蚊、はえ、その他の害虫が発生しないようにする
- 他の物が混入することのないように仕切りを設ける
- 容器に入れ密封するなどして揮発防止のための措置をとる
- 高温にさらされないよう措置を講ずる
- 腐食防止のための措置を講ずる
具体的には
以下のようにしましょう。
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- 屋根のある建屋内に保管する。
- 保管容器はフタ付きで油量に対して十分な容量のものを使う。
- 万一の漏れに備えて金属製容器、オイルパンを使って保管する。
- 地下浸透防止のため、ひび割れや継ぎ目のないコンクリートの床、樹脂コーティングの床の上で保管する。
- 紛失を防止するため、PCB廃棄物単体で保管する。
- ボイラー室など、高温のところで保管しない。
- 腐食防止のため、温度、湿度の高いところを避けて雨漏りに注意する。
- 容器をロープで固定するなどして簡単に倒れないようにする。
収集運搬
PCB廃棄物の運搬が可能な特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可業者に委託してください。許可対象車で運搬をする必要があります。さらに高濃度PCB廃棄物の運搬は「日本環境安全事業株式会社(JESCO)」の入門許可証を持つ事業者でなければ処分施設に搬入することができません。
期間内の処分
PCB特別処置法という法律が作られた当初は平成28年7月までに処分することと規定されていましたが、PCBに汚染された電気機器が大量に存在することがわかり、処理期間は平成39年3月31日までに変更になりました。nnその期間内に事業者はPCB廃棄物を自ら処分するか、処分を他人に委託しなければならないと定められています。nn環境省は、
「PCB廃棄物は定められた期限までに処理しなければなりません。これを1日も早く達成するため最大限努力する必要があります」
と声を大きくして呼びかけています。期限を決めてやりきらなければならない感じが伝わってきますね。
電気事業法に基づき、所管の産業保安監督部に届け出を行う必要があります。現在使用中のものについても処理施設の操業期間を考え、計画的に使用をやめて処理を行ってください。
問い合わせ窓口
窓口一覧表はこちらになります。
まとめ
いかがでしたか。ポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物について解説しました。
PCBは使い終わってから何十年も経っていますが、なかなか安全に処理できるところがないのでずっと保管されたままの廃棄物です。
世界の国々では高濃度PCB廃棄物を焼却処理しているのに対して、日本ではJESCOが「水熱酸化分解」や「脱塩素化分解」など、非常に高度な処分方法を採用しているそうです。「頑張れジェスコ!」と言いたくなります。安全な世の中になりますように。