静岡県の建設業許可|建設業許可っていま必要?全体像を解説します。
建設業を営む皆さんにとって、建設業許可は切っても切れない、忘れたくても忘れることのできない存在です。
あなたの会社ではもう、許可は取得されていますか?
「いやぁ、ウチはそんなに大きい工事はやらないから大丈夫。」
「うちは個人事業主でやってるから必要ない。」
「一人親方で独立したけど、会社にいた頃とやってることは変わらないから要らないと思う。」
というような声を聞くこともあります。どれも必要ないんじゃない?という立場からの意見のようにきこえます。
もっと言ってしまうと、「できれば避けて通りたい」というようにも受け取ることができます。
そうなんです。許可制という性質上、どうしても行政への手続きが発生することとなり、時間と手間とお金がかかります。
そればかりか、せっかく取ろうと思って動き出してみたのに、なんと条件を満たせず取れないことがわかり、精神的にもダメージを受けてしまう。。。ということも実はよくあります。それが建設業許可申請の現状です。
この記事では、建設業を営むあなたに建設業許可の取得を目指そうと思ってもらえるように、建設業許可の全体像についてわかりやすく解説していきます。
ぜひ最後までおつきあいください。
建設業許可とは
それでは、どんな場合に建設業許可が必要でしょうか。
これが意外と知られていないかもしれませんが、全ての種類の建設工事の施行について建設業の許可は必要です。
ただひとつ、例外として軽微な建設工事のみを請負うことを営業とする場合は許可が要りません。
ここできちんと解説しなければならない言葉があります。つぎの3つです。
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- 建設工事の種類
- 建設業者
- 軽微な(建設)工事
1.建設工事の種類
建設工事とは建設業法別表第一とう表に示されている29種類の工事のことを言います。
下の表の左側が工事の種類で、その右側にあるのが対応する建設業許可です。
土木一式工事
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土木工事業
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建築一式工事
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建築工事業
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大工工事
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大工工事業
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左官工事
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左官工事
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とび・土工・コンクリート工事
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とび・土工工事業
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石工事
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石工事業
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屋根工事
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屋根工事業
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電気工事
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電気工事業
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管工事
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管工事業
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タイル・れんが・ブロツク工事
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タイル・れんが・ブロツク工事業
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鋼構造物工事
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鋼構造物工事業
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鉄筋工事
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鉄筋工事業
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舗装工事
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舗装工事業
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しゆんせつ工事
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しゆんせつ工事業
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板金工事 |
板金工事業
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ガラス工事
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ガラス工事業
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塗装工事
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塗装工事業
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防水工事
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防水工事業
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内装仕上工事
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内装仕上工事業
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機械器具設置工事
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機械器具設置工事業
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熱絶縁工事
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熱絶縁工事業
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電気通信工事
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電気通信工事業
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造園工事
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造園工事業
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さく井工事
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さく井工事業
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建具工事
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建具工事業
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水道施設工事
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水道施設工事業
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消防施設工事
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消防施設工事業
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清掃施設工事
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清掃施設工事業
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解体工事
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解体工事業
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2つの一式工事(土木一式、建築一式)と27の専門工事があります。
一式工事というと、どんな場面にも使えそうなオールマイティーな許可のような雰囲気がありますが、そうではありません。また、一式工事は工事の種類で、許可の名前ではありません。
例:建築一式工事が行える建築工事業の許可をもっていれば、大工工事、屋根工事、内装仕上工事など全てを請負って家一軒建てることが出来る。
→これは間違いです。
⇒建設業許可|一式工事ととび土工コンクリート工事で混乱しやすい点
⇒建設業許可|29の許可業種・選ぶポイントはこれ!
2.建設業者とは
建設業者とは上記の表の29のいずれかの許可をうけて、建設業を営むものをいいます。
言い方を変えると、許可をうけていないものは建設業者とは言わないということになります。
つまり、建設工事をして営業をしている事業者も、下で述べる軽微な工事のみを請け負っているのであれば、建設業法上は建設業者ではないということです。
軽微な工事以外の例外はありませんので、元請・下請・孫請や、法人(株式会社、有限会社、合同会社などの別)、個人事業などの区別はありません。
どういう業者が建設業者に含まれ、どういう業者が含まれないかを具体的に国土交通省が次のように例示しています。
建設業者に含まれるもの
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- 公共発注者からダム築造工事を請け負ったゼネコン
- 地方自治体から道路舗装工事を請け負った専門工事業者
- 一般消費者から持ち家の建て替え工事を請け負ったハウスメーカー
建設業者に含まれないもの
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- 工場製品を製造する会社CMR(コンストラクション・マネージャ)
- 除草作業を行うシルバー人材センター
- 建築士事務所
3.軽微な(建設)工事とは
上で解説しましたとおり、軽微な工事というのは建設業許可を受けなくてもできる工事のことです。
しかしながら、実際には発注元や元請企業のコンプライアンス(法令遵守)の観点から、なるべく許可業者に仕事を出そうという流れが主流となっています。ですので、軽微な工事しか請負わない場合にも建設業許可を取っておくことをおすすめしています。
ここでいう「軽微」とはどういうことかというと、金額が少ないもしくは規模が小さいという意味で使われています。
具体的には軽微な工事とは、
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- 一式工事の場合は1500万円未満または延べ面積が150㎡未満の木造住宅建築工事
- 専門工事の場合は500万円未満の工事
のことをいいます。
⇒建設業許可が不要な軽微な工事ってどんな工事のこと?
建設業許可の種類
知事許可か大臣許可か
建設業の許可は都道府県知事または国土交通大臣のどちらかが行います。どちらの許可を受けるかは営業所の所在地によって分けられます。
知事許可
1つの都道府県の区域内にのみ営業所を設ける場合の許可です。
1つの都道府県の区域内に2つ以上の営業所を設ける場合も含まれます。県内のことはそこの県知事にお願いするというイメージです。
大臣許可
2つ以上の都道府県の区域内に営業所を設ける場合の許可です。
例えば静岡県に本店をおき、愛知県に支店を設けるというような場合です。県を超えたら全国規模ということで大臣にお願いするというイメージです。
⇒大臣許可と知事許可の違いとは。あなたの営業所は?
一般か特定か
下請負の状況により2つに区分されます。
特定か一般のどちらかの許可を受けなければなりません。(同一業種で一般と特定両方の許可を受けることはできません)自社が元請けか下請けか。元請けの場合は下請けにだした合計請負金額により分けられます。
特定建設業許可
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- 発注者から直接請け負う(元請け)場合
かつ
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- 1件の工事について下請代金の総額が税込み3000万円(建築一式工事は4500万円)以上になる場合
これは上層にいる大きな元請業者をやや厳しく規制することで下請負人の保護を目的としている制度です。
一般建設業許可
上記の特定建設業以外の場合は一般建設業許可ということになります。
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- 自社が元請だが下請に出さない場合
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- 下請に出す(元請)が、下請契約代金合計額が税込み3000万円(建築一式工事の場合4500万円)未満の場合
⇒「一般」?「特定」?その違いは
建設業許可を取得するには
さて、ここからは建設業許可を取るための要件について簡単に解説します。
建設業許可を取るには大きく5つの要件というものがあり、これらをすべてクリアしなければなりません。
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- 経営管理責任者がいるか
- 専任技術者がいるか
- 一定のお金があるか
- 誠実性があるか
- 欠格要件に該当しないか
5つ挙げましたが、実際に重要なのは1~3です。4と5は組織として運営されているのであれば通常は当然に満たしているものなので、あまり気にする必要はありません。
1.経営業務の管理責任者がいること
経営業務の管理責任者とは一定の経営業務を管理した経験を有する者のことです。略して経管(けいかん)と呼ばれることが多いです。
この経管を置くことができるかどうかが建設業許可取得への一番の難関と言われています。
許可の要件に経営経験を求められるのは
建設業は他に比べると、特殊な業界と言われます。一つの建築物を作るのに多種多様の業種と協力して工事を進めていくからです。
また、天候の影響などを受けやすく生産効率が低下しやすい産業です。さらに住宅、道路、水道など国民の生活に深く関わる大変重要な産業でもあります。
建築物は何十年にもわたって使用されていくものですから、建設業者もその分長く責任を負う必要があります。
そういった理由から会社が簡単に倒産しないように、一定の経営経験をもつ人を責任者に置くことが出来る会社にのみ許可を与えるということになっています。
経管は、法人の場合なら常勤の役員(取締役、執行役など)、個人の場合なら事業主本人または支配人登記した支配人が、次のa.b.c.のいずれかの条件に該当することが必要です。
a. 許可を受けようとする建設業に関して5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有していること「建設業法第7条第1号イ」
b.許可を受けようとする業種以外の建設業に関し、6年以上経営業務の管理責任者としての経験を有していること「建設業法第7条第1号ロ」
c.許可を受けようとする建設業に関し、6年以上経営業務を補佐した経験を有していること「建設業法第7条第1号ロ」
⇒経営業務の管理責任者(略して経管)を詳しく説明!
2.専任技術者が営業所ごとにいること
専任技術者とはその業務について資格または一定の知識や経験を持つ者のことです。営業所に専属でなければなりません。略して専技(せんぎ)とよばれることもあります。
上記の経管と専技の両方の要件を一人のひとが満たした場合、その両方を兼ねることが出来ます。
専任とは
その営業所に常勤してもっぱらその職務に従事することを言います。
よって以下の様な者は原則的に専任とは認められません。
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- 現住所と営業所が著しく遠距離で一般的には通勤不可能であると思われる者
- 他の営業所において専任でなければならない職務を行っている者
- 最低賃金法に基づく最低賃金以下の者
資格とは
一級建築士や第一種電気工事士などの建設業に関する国家資格等です。
経験とは
一定の経験とは、許可を受けようとする建設業の種類に関わる
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- 10年以上の実務経験 もしくは
- 大学の指定学科を卒業後3年以上、高校の場合は指定学科卒業後5年以上の実務経験
のことを指します。
「実務経験」は1つの業種につき10年必要です。例えば一人を内装仕上げ工事と大工工事両方の専任技術者としたい場合には内装で10年、大工で10年、の計20年もの経験が必要となる計算です。これはかなり難しいと思います。
逆に「資格」の場合は一つの資格をもっていれば複数の専技になれる場合があります。
また、実務経験を証明するには多くの資料が必要になります。できることなら頑張って資格を取得してしまうのが効率的な方法といえます。
いずれにしてもこの専技という要件も満たさないと建設業許可がとれないということになります。
ウチの会社には専技に該当する人がいない!という場合
大丈夫です。該当する人を探して迎え入れることでここは対応可能です。
⇒専任技術者(略して専技)を詳しく説明!
3.一定のお金 財産的基礎または金銭的信用
建設業許可をうけるためには、一定のお金を持っているかどうかも判断される基準となります。
経管のところでも説明しましたが、会社が簡単に倒れてしまわないよう適正な経営をしていく基盤の確認ということになります。
一般建設業の場合は、以下のどちらかを満たせば財産的基礎または金銭的信用を有していると認められます。
500万円以上の自己資本があること
自己資本とは口座残高もしくは直前の決算の純資産合計の額です。これらが500万円以上あること、ということが要件になります。
500万円以上の資金を調達する能力があること
担保とすべき不動産等をもっていることなどで金融機関から500万円以上の融資を受けられる能力があるかどうかが判断されます。
⇒財財産要件とは?許可の申請にはお金はいくら必要?
許可を取った後について
建設業許可を取得できたら、それで終わりではありません。
最初の方で述べたように、法律上はここからが建設業者です。果たさなければいけない義務が課されることになります。
許可の更新
建設業許可を維持するためには5年毎に更新の手続きを行います。また、更新のためには毎年決算変更届を提出します。
その他の義務
その他にも標識の設置や、帳簿の保存などの義務があります。少々細かいので、詳しくはコチラの記事をご参考ください。
まとめ
建設業許可について概要を解説しました。最後までお読みいただきありがとうございます。
繰り返しになりますが、建設業許可はコンプライアンス(法令遵守)の観点から非常に重視されています。今後もその流れは強くなることと思います。
建設業の許可要件は建設業法で定められたものですので、基本的な部分は全国どこでも同じはずです。
しかし、申請に必要な書類は都道府県によって大きく違う場合がありますので、ご自身で申請しようという方は一度役所に問い合わせしてみることをおすすめします。